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2009年5月19日 (火)

鑑識も最初はドジることもある。

鹿児島の探偵というお仕事~鑑識・足跡・写真~
※当ブログ記事はすべてノンフィクションです。

今日は、私が鑑識の新米のころに、やっちまったドジ話をいくつかお話ししてみたいと思います。
まず、足跡採取のドジ話

ある盗難事件現場でのこと、お婆さんがひとり暮らしのとにかく古い家でした。
縁側の戸のガラスが割られ、そこから犯人は侵入、室内を物色して、玄関から逃走。
侵入口の縁側をよく見ると床の上にきれいに足跡が残っていました。

「ラッキー、他の捜査員たちが踏んで壊さないうちにさっそく採取しちゃいましょう」
ってことで、準備に取りかかりました。

土の上の足跡は石膏で採取しますが、床の上の足跡は、透明の粘着シートに転写させて
採取します。
現在は、KSシートといって、粘着力は弱いけど、しっかりと足跡を転写してくれる
すぐれものが出ていますが
当時は粘着面がゼラチンになっているひじょうに粘着力の強いものを使っていました。

それを、何の気なしに床の上の足跡にローラーで圧着させました。
いつもやっているとおりにマニュアルどおりにね。

貼ったゼラチンシートを気持ちよく床から引き剥がしたときでした・・・・

バリバリって音がして、床材に塗ってあったニスがおもいっきり剥げてくるでは
あーりませんか (泣)

やべぇ、と思ってよく見てみると、古い家なもんですから、ニスがもう古くなってボロボロの状態でした。
そこに粘着力の強いゼラチンシートを貼ったわけですから、たまったもんじゃないですよね(笑)
それも、気付いたのは、そこら中についている足跡10個くらいに全部ゼラチンシートを貼った後でした(笑)

今は、笑って話せますが現場では真っ青でしたよ!
他のシートを剥がすときは、念を入れてゆっくりゆっくりしましたが、さすが粘着力の強いゼラチンシート
気持ちよくニスを吸い上げてくれて、証拠の足跡は全部お陀仏だし
家主のお婆ちゃんには平謝り状態で、もう散々でした。

そういう現場用の静電気を使って粘着力のないシートに足跡を吸い上げて採取する方法が
あったんですけどね。
考えなしに行動することにおもいっきり反省した現場でした(笑)

次に写真撮影のドジ話

鑑識の仕事の中で、一番技術を要するのが現場写真撮影です。
カメラも現在のようなオートフォーカスではなく、完全なマニュアル機です。
フィルムの感度・絞り・シャッタースピード慣れたら、なんてことはないんですが
慣れないうちは、考え考えしながら撮っていきますので、ほかの事に気が回らなくなっちゃうんです。

ある殺人事件の現場検証の写真撮影をした時のことでした。
担当の捜査係長がとにかく怖い人で、ちょっと思ったようにこちらが動かないと
現場だろうがどこだろうが怒鳴りとばす人でした。

以前ストロボの電池が切れてカメラカバンの中を見たときに、替えの電池を忘れたことに気付き
その係長に申告しておもいっきり叱られた経験があるものですから、前日から緊張して
カメラを磨きストロボの電池を交換して、フィルムの予備もしっかりと準備しました。

そして、当日現場検証がスタートしました。
立会人に集落の公民館長さんをお願いして、写真撮影をしていきました。
その公民館長さん、たまたまその日、飛行機で鹿児島を発たないといけない用事があり
時間勝負のような現場検証でした。

シーンとした中に係長の説明と私のカメラのシャッター音だけが響いていました。
半分くらい済んだとき、少し余裕が出てきた私は
ん?という感じに気付きました。

何だ?シャッタースピードも絞りも完璧!でもなんか変な感じ?
そう思って、フィルムを1枚巻き上げました。
げっ!!!か・軽い・・・フィルムが入ってない・・・

鑑識なら1枚目を巻き上げた時に気付くんです。
フィルムが入ってないと右手の親指にかかる感覚がすごく軽いんです。

平時なら絶対にしない、それも時間勝負のこんな現場では一番やってはいけないドジでした。
緊張の現場で、感覚が鈍ってたんでしょうね・・時計を見たら、軽く1時間くらい過ぎた後でした。

係長に消え入るような声で
「すみません・・・フィルム入れ忘れてました・・・」
一瞬現場の空気が凍りつきました(汗)

次の瞬間、怒鳴り飛ばされるかと思いきや、係長の優しい一言
「時間がないから、早くフィルムを準備しなさい、最初からやりなおそう」
ホッとして、準備をして大急ぎで写真撮影をやりなおしました。
無事にギリギリで終了することが出来て、ホッとして署に帰りました。

このまま何もなく終わるのかなと思っていましたが、甘かった(笑)
係長から魂も何もどこかに消しとぶんじゃないかってくらいに怒られました(汗)

いや~若気の至りでした(笑)殺人事件の現場検証ですからねぇ、怒鳴られて当然です。
現場で怒鳴らなかった係長に感謝でした(笑)
次回は、指紋に関するドジ話をしたいと思います。お楽しみにぃ~

If you fight, We become your sword and shield.
~あなたが戦うのなら我々はあなたの剣と盾になりましょう~

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