鹿児島の探偵というお仕事~雪の上の足跡~
鹿児島の探偵というお仕事~鑑識・足跡~
※当ブログ記事はすべてノンフィクションです。
今日は、現職時代に取り扱った事件で、雪の上につけられた足跡を採取したときのことを
ご紹介します。
冬の一番寒い頃でした、当直の夜に「何にもなけりゃいいがなぁ」って思った瞬間に
「小学校で侵入警報」との指令がありました。
「あ~あ」と思いつつも、現場第一の鑑識としては、そっこー準備をして現場に向かいました
「誤報でありますように・・」と祈りつつ。
けっこう、誤報も多いんですよ、行ってみたら蜘蛛に警報機が反応してたみたいなこと、何回もありましたよ。(笑)
現場に近づくと、空から白いものが・・「雪だ(涙)、寒いなぁ山の上の学校だよなぁ・・」
現場についてみると、案の定校庭は真っ白の雪景色、強力ライトを使ってよく見るとそこに
裏門から校舎に向かって続く雪上の足跡
「きた~(泣)、雪中足跡の採取だぁ!」
この雪中足跡こそ鑑識泣かせの一番ってやつなんです。
通常足跡採取には、刑事ドラマでご存知の方も多いと思いますが石膏を型枠の中に
流し込み採取いたします。
石膏による足跡採取方法は、まず洗面器の中に水を張り、この中に石膏の粉を入れます。
これをある程度固まるまで手でかき混ぜます。
トロッとなった頃に足跡の上につけた型枠の中に流し込んで
石膏の浸透により足跡の凹凸を型取ります。
夏場はまだいいんです、暑いから、水に手を突っ込んで石膏を混ぜててもなんてことありません。
ところが、冬の現場は違います。もちろん洗面器の水も地獄のように冷たいです。
それに、石膏がトロッとなるのに、夏の十倍位の時間がかかります。
氷水の中に、冬場屋外で一時間手をつけっぱなしにしていることを想像してください・・・
手が千切れるんじゃないかって、感覚ですよ。
特に、雪の上の足跡採取の場合は、更に地獄が待っているんです。
石膏というのは、成分がカルシウムですから、水と化学反応を起こすと熱を発します
と言っても、鑑識の手を温めてくれるほどの熱じゃないんですよね (笑)
でも、その熱が雪の上の足跡には命取りです。
石膏を流し込んだときに、その熱で、雪で出来た足跡の凹凸が融けてしまうんですよ・・
そうなったらせっかく犯人が現場に残してくれた証拠が台無しになっちゃいます。
そこで何をするかと言うと、石膏を入れた洗面器の水の中に現場に降り積もっている
雪の塊を入れて、石膏が出す熱を下げるんです・・・
氷水の中に更に氷を入れて、それを真冬の屋外で手で混ぜる・・
もう、冷たいとか何とかの問題じゃありません、水の中に10秒と手をつけてられないんです。
数回混ぜたら、手にハーハーと熱い息を吹きかけて、また混ぜるの繰り返し・・・
更に時間がかかるんです(泣)
やっと、終わった頃にはもう空も白み始めなんてこともしょっちゅうでした。
まあ、そのおかげで犯人も特定することが出来て頑張った甲斐はあったんですけどね(笑)
鑑識のつらいつらい一面でした。暑い夏、寒い冬に外で頑張ってる鑑識マンを見たら、
「ご苦労さん、頑張ってね」って、やさしく声をかけてください。
では、また。
If you fight, We become your sword and shield.
~あなたが戦うのなら我々はあなたの剣と盾になりましょう~
コメント