指紋は語る!
鹿児島の探偵というお仕事~鑑識・指紋~
※当ブログ記事はすべてノンフィクションです。
現職中に取り扱った窃盗事件です。
事件はある病院の職員用ロッカールームで起きました。
現場に行って事情を聞いてみると・・・・
看護師さんがロッカーの中に入れていた財布の中から現金が盗まれた
とのことでした。
外から外部のものが侵入できる場所ではなく、今までに何人も被害者が出ていたが
病院の評判にも関わるし、犯人は職員しかいなさそうなので
届けをしていなかったらしい。
病院の管理も職員の管理もずさんなものでした。
それだけ被害が拡大しているにもかかわらず、個人ロッカーへの施錠も
されていませんでした(汗)
身内に泥棒がいる状態なのに、さあ盗んでくれ状態でした(笑)
現場のロッカールームに入り鑑識作業を始めましたが、職員の交代時間に重なり
当直明けの看護師さんが着替えに来るたびに外に追い出される始末・・・
時間が通常の倍かかりましたよ(泣)
帰っちゃう、職員の協力者指紋ももらわないといけなかったしね。
協力者指紋というのは、被害関係者であれば、現場から指紋が出るのは当たり前です。
現場から採取した指紋の中から被害関係者の指紋を選別して除くために
台紙に被害関係者全員から指紋をもらうのです。
空き巣とかの被害にあわれたことのある人は、わかると思いますけど
この協力者指紋の採取も色々と大変です。
インクで手が真っ黒になるし、やはり警察に指紋をとられるというのは
いい気持ちのしない人もいますから・・・・
「俺は被害者なのに、犯人扱いされて指紋を取られた!」
って怒り出す人がいたり
「あ~あ、この指紋は警察にずっと残るんでしょう、もう悪いことはできないなぁ」
なんて、わけのわからないことを言う人がいたりです(汗)
念のため言っておきますが、協力者指紋は、現場指紋との選別対象が終わったら
各警察署単位で、担当の鑑識係がシュレッダーにかけて裁断破棄しています。
年間、何千人もの協力者指紋をとりますから、保管してたら保管場所が大変なことに
なってしまいます。
あっ、話がおもいっきりズレた(笑)もとに戻します。
病院のロッカールームでの鑑識作業を終わって、その日に勤務をしていた
看護師さんたちに交代で控え室に来てもらい協力者指紋をとらせてもらいました。
すると20代後半の看護師さんが控え室に入ってきました。
にこやかな笑顔とともに!イスに座るとこちらからは何にも言わないのに
「私、指紋とか、こんなのに興味があるんです、現場から指紋は出たんですか?」
って質問してきました。
「指紋が出たから、被害関係者から指紋をもらってるんですよ」と説明したところ
「私も、ロッカールームを使ってるし、指紋ベタベタ出るだろうなぁ」
とか、とにかく喋りまくり・・・
そうしながらも指紋を採取しようと手をとり、指にインクをつけて台紙に押捺しようと
しましたが、ぜんぜんインクが付かない
ん?と思って、手のひらを見てみると、その日は真冬で控え室は暖房も
入っていなかったから、寒いぐらいだったのに汗びっしょり・・・
それで、インクが手に付かなかったんです。
そこで、
「犯人しか触らないところから指紋も出てるし、すぐ捕まりますよ(笑)」
と言ってみたところ、さらに汗が噴出!
本当に噴出って感じでした。
指の汗をふきとりつつ、なんとか指紋を採取し終わって帰るときも
その看護師さんは私の方を振り向いて
「どれくらいで、犯人わかりますか?(汗)」
私はにっこり笑って
「すぐわかりますよ」
って返したところ、無言のまま出て行きました。
担当刑事に「もともと汗かきの人もいるから、捜査は慎重にするように」と
付け加えた上で、今の状況を説明したところ、さっそく捜査開始!
刑事が捜査をしたところ、その看護師さん借金のヤマでした。
慎重に外堀を固めた上で、本人を呼び出したところ
すぐ窃盗を自供、事件解決!
そのとき、その看護師さんが刑事に聞いたことが
「何でわかったんですか?現場の指紋ですか?」
私は言いたかった
「違うって、あなたの様子・手の指紋が大いに物語ってくれたよ!」
悪いことをして平気でいられる人はいません。
落ち着いた様子を見せているようでも、冷や汗は出るし、能弁にもなる。
警察の捜査の動きが気になって、つい聞かなくていいことまで聞いてしまう
いきなり「犯人はあなたです!」って、言われて手錠をかけられそうな気がして
怖くてしょうがないんですよね。
警察を騙すなんて、出来るはずはないんです。
刑事も鑑識も海千山千の犯罪者連中と常に渡り合っていますから(笑)
まぁそういうことで、指紋は語るでした。では、また。
If you fight, We become your sword and shield.
~あなたが戦うのなら我々はあなたの剣と盾になりましょう~
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