鑑識も最初はドジることもある。その2
鹿児島の探偵というお仕事~鑑識・指紋~
※当ブログ記事はすべてノンフィクションです。
前回に引き続き、私の若い頃のドジ話にお付き合いいただきます(笑)
今回は「指紋」です。
鑑識のドジの中で一番やっちゃいけないのが「指紋」です。
でも、やっちゃうんですよね。ふっと気を抜いたときにポロってね。
脅迫事件を取り扱った時でした。
脅迫文が、紙に印字されて玄関の郵便受けに入れられてたということで
被害者が届けに来ました。
事件として受理した強行犯係から、鑑識にその証拠品である脅迫文が
まわされてきて私が担当となり、指紋検出をすることになりました。
紙片からの指紋採取は、指紋検出用ニンヒドリン溶液というものを使います。
「ニンヒドリンという物質をアセトンで溶かして刷毛で検体に塗る」ことで
その検体に付着している指紋のアミノ酸にそのニンヒドリンが反応して、
赤紫から青紫色に変色して指紋を浮き上がらせるのです。
鑑識なら普通にこなせる作業です。
私もいつもの作業工程と同じように、処理を進めていきました。
ニンヒドリン溶液を器に移し刷毛を浸して、むらがないように一気に塗る。
そのときでした・・・・
わっ!印字された脅迫文章が、全て消えた!!(汗)
本当に、一瞬でした。
証拠の脅迫文章が印字された紙片がいきなり何も書いていない真っ白な紙片に
変化したのです。
私は、とんでもないことを見落としていました。
実は、その脅迫文は今は懐かしいワープロ機でうたれており
感熱紙に印字されていたのです(泣)
先ほど、指紋検出用ニンヒドリン溶液は
ニンヒドリンという物質をアセトンで溶かして・・
って、説明しましたが・・・
実はこのアセトンが結構強い物質で、長く使っているとニンヒドリンを塗るための
刷毛でさえもボロボロになってくるくらいのものなんです。
換気のいいところで作業をしないと、頭痛がしてくるくらい人体にも影響があります。
感熱紙に印字された文字っていうのは、けっこうもろいものなんですよね。
長く太陽光に当てているだけで、字が消えてしまうくらいですから。
そんな弱いものに、気持ちよく強力なアセトン入りニンヒドリン溶液をおもいっきり
塗っちゃったんです(汗)
いつも確認するよう言われてたし、実験もして消えてしまう結果も体験してたから、
知ってたんですよ、本当にふっとした気の緩みですよね、事件担当係へ説明に行き
被害者へ説明し、消してしまった報告書を作りと大変な一日になってしまいました。
ちなみにこの文章の内容は、事前にコピーがとってあり、ことなきを得ました。
皆さんも、毎日の仕事や生活が流れるように過ぎていきますよね。
でも気をつけてください、本当に落とし穴はどこにあるかわかりませんよ(笑)
こんな話していると、ドジばっかり踏んでたみたいに思われるかもですけど、
これらのことは、私が鑑識をしていた10年間くらいの間のほんのちょっとの出来事
ですからね。普段はちゃんと仕事してましたから(笑)
では、また。
If you fight, We become your sword and shield.
~あなたが戦うのなら我々はあなたの剣と盾になりましょう~
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