完全犯罪はない!
完全犯罪はない
鹿児島の探偵というお仕事~鑑識・指紋~
※当ブログ記事はすべてノンフィクションです。
今日は、現職時代に取り扱った窃盗事件で、指紋にまつわる面白い事件が
あったので、ご紹介します。
ある夏の暑い日、「空き巣狙い窃盗事件発生!鑑識は臨場せよ」
との指令を受けて現場に向かいました。現場到着してみると、玄関ドアのガラスが
割られ、家の中は物色されて、散乱状態でした。
けっこう大きな家でしたので、鑑識係としては、た~っぷりと作業をする場所があり
うれしいやら・・・ため息やら・・・でした。
とどめは、被害者が、クーラーをつけてくれないため、被害現場の家屋内は
蒸し風呂状態・・・
当時から少々メタボぎみ(現在は、おもいっきりメタボです 泣)だった、私は
意識も遠のきそうな状態での作業でした。
でも、そこはほら、プロとしての意地がありますから、作業には手を抜くことなく
必死にやりましたよ!
作業は、まず侵入口である玄関から
指紋検出用のアルミニウム粉末
を使って、刷毛でひとふり、すると出てくるではありませんか!手袋のあと・・・泣
あ~あ、手袋使用か・・こりゃ、捜査は困難になりそうだな・・と思いながらも
足跡・DNA資料を見つけるために、部屋中を這いずりまわっていました。
室内の物色場所からは、手袋痕しか出てこない、ひととおり、室内の作業を済ませて
逃走口の掃き出し窓の作業を始めたところ、
あれ?サッシのガラスから指紋が!
家族の指紋だろうな、と思いつつも、とりあえず採取、現場から採取した指紋と
家族の指紋をふりわけるため、家族の協力をもらって、家族全員の指紋を
取らせてもらい、現場は終了しました。
警察署に帰ってからすることは、指紋採取の捜査報告書を作成すること。
そして、それを現場から取った指紋とともに
県警本部鑑識課の指紋鑑定のプロの人たちのもとへ送ることです。
鑑定には、しばらくかかります。数週間後、県警本部から、
空き巣事件の指紋が、少年にヒット(符号)しました。捜査をしてください
との連絡がありました。
少年係が、当の少年を呼び出して事情を聞いたところ、素直に自供。
犯行の状況を聞いたところ、笑っちゃいました。
犯行は友人と二人で、決行。
テレビで見て、指紋を残したらいけないという知識はあったみたいです。
でも、手袋なんて気の利いたものは、持っていない。
自分たちがはいていた靴下を脱いで手に被せ、泥棒をはじめました。
物色もし終わり、目的の現金も見つけて、ふっと気が抜けたんだそうです。
そしたら、現場の中が異常に暑いことに気付き、滴り落ちる汗を拭くために
靴下を手から取り外したんだそうです。
そのとき、室内に鳴り響く電話の音、
プルルルル~
びっくり!逃げ出そうとして、手袋代わりの靴下はポケットに突っ込んだまま
窓を素手で開けて逃走。
そのときに、おもいっきり指紋を窓ガラスに残していったんですね 笑
犯罪者の心理です、音にすごく弱いんですね、今回は被害者の親戚が
なんにも知らずにかけてきた1本の電話が、事件を解決に導いたんです。
本当に、悪いことなんて出来ないようになってるんです。
人間、もともと弱いものです。
犯罪なんて、普通の生活の中にはない極限の状態ですから
それに平気な気持ちで臨める人なんていません。
平静を失えば、必ず、何かしらの失敗をおかします。
外を走る車の音が、警察の車の音に聞こえるんです。
恐くて、しょうがないんですよね。
それに、警察の鑑識技術や捜査手法も格段にアップしてきていますから
完全犯罪はありえないのです。
今日は、指紋にまつわる面白い窃盗事件の紹介でした。では、また。
If you fight, We become your sword and shield.
~あなたが戦うのなら我々はあなたの剣と盾になりましょう~
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