鑑識担当として取り扱った事件
民間被害者対策チーム「アルゴスユニット」のヤマモトです。
私は、現職中に鑑識担当として10年位を過ごしました。
その間、殺人、強盗、強姦、窃盗等さまざまな事案に取り組んできました。これまで、取り扱った事案について、興味深い事案がたくさんありましたので、被害者や被疑者の人権保護に気をつけながら、話せる部分を少しずつアップしていきたいと思います。
今日は、ある所属在任中に取り扱った殺人事件についてです。
ある夜、自宅で、「さあ、そろそろ寝ようかな」と、思っていたときでした。いきなり鳴り響く電話の呼び出し音に、嫌な胸騒ぎを感じつつ電話に出ました。当直の刑事からの、「傷害事件発生です、被害者2名、出動をお願いします」との依頼でした。
私たち鑑識は、殺人、強盗、強姦等強行事件が起これば、強行事件担当刑事と一緒に呼び出され、窃盗事件が発生すれば、窃盗事件担当刑事と一緒に呼び出され、ひき逃げ事件等交通関係事件が発生すれば、交通事件担当捜査員と一緒に呼び出されます。だから、休みも休みのようではなく、ほとんど現場にいたような印象があります。今「臨場」というドラマやアメリカでは「CSI」というドラマをやっていますが、まさにあの感じです。
犯人は、初老の男性。友人と二人で、居酒屋で飲んでいるとき、ふとしたつまらないことから喧嘩になりました。よっぽど許せなかったんでしょうね、店を飛び出し自宅に立ち返り、包丁を持ち出しました、店に舞い戻ったその男性は、問答無用で友人の胸を包丁で一突き・・・、飛ぶ血しぶき、店の中は騒然となりました。その後、男性は包丁を手に握ったまま、店を出ました。通りを血だらけの包丁を握って歩いていたところ、目の前から歩いてきた酔っ払いに「お前、その包丁はなんだ?人も刺せないくせに」とからかわれ、カッときて、その酔っ払いの胸を路上で一突き。倒れこむ酔っ払い、騒然となる飲み屋街。男性は、そのまま、道を進み、スナックに入り、客や従業員を人質に立てこもりました。
私と鑑識係長が第一現場である居酒屋に到着するかどうかというときに、無線で「居酒屋で刺された男性死亡」の一報が入り、事件は傷害事件から殺人事件へと変わりました。到着してみると、現場居酒屋は、血の海、まさに地獄絵図でした。鑑識係長と二人で、
写真撮影
血痕採取(乾燥ガーゼで直接ふき取って採取)
指紋採取(アルミ粉末等多種多様の粉末液体を使用しての採取)
足跡採取(静電気足跡採取機などを使用しての採取)
等鑑識作業をたんたんとすすめているときに、無情な無線の第2報「路上で刺された男性死亡」、これで連続殺人事件になりました。それとほぼ同時に、「スナックに犯人らしき男が人質を取り立てこもっている模様」との無線が鳴り響きました。
「早く済ませて、次に行かんといかんな」鑑識係長の静かなつぶやき。
居酒屋の現場資料採取などを全て済ませて、第二現場である通りの路上へ、ここも血の海、肉片、大変な状態でした。
その後、それ以上の被害者も出ずに、犯人も逮捕され、私たちは、資料採取・写真撮影に朝までかかりきりでした。
犯人が逮捕されたあとも、証拠品の精査とか、取調べで、ずっと忙しい日が続くんです。テレビの刑事ドラマの世界みたいに、犯人逮捕で全て終わりならいいんですが、現実は、逆につかまった後のほうが忙しいんです。なかなか、一般の人にはわかりにくい、警察捜査の裏側の大変な一面でした。
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